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あら、これはあれですか。
私から逃げようとされていらっしゃる!
このままでは準備やタイミングが無駄になってしまいます。
なので私は逃がすまいと、彼の腕を掴み形振り構わず……。
「どこに行くのですか! 折角明日は私とルシアさんの二人きり! 蜜月の時ではないですか! なんなら今からしゃれこみますか!? …………そうですね、そうしましょう! というわけで、この超強力精力剤をお飲み下さい! そして私にルシアさんの子供を身籠らせて下さいよ!」
「やっぱりろくなもんじゃねえ! んなもん誰が飲むか! 離せ! 離せっちゅうに! いやー、犯されるぅぅぅ!」
「もー、うっさいんだけど……。 もう夜中なんだから…………って、なにしてんのさ、二人とも……」
なんというタイミングで起きてくるのですか、ホノカさん。
そのせいで、私の動きがピタリと止まり、手をすり抜けてルシアさんが逃げてしまったではないですか。
「あっ、ルシアさん! お待ちください!」
「いーやーだーねっ! 俺は数日サハドさんの家に泊まるから、ルーネは一人で留守番してろ! じゃあな!」
ルシアさんはそう吐き捨てると、夜闇へと姿を眩ましたのでした。
「そ、そんなぁぁぁぁ! 折角……折角色々準備して、いざ明日って時に……!」
私は膝から崩れ落ち、四つん這いに。
すると見かねたホノカさんは、
「な、なんかごめんね。 邪魔しちゃったかな……。 え、えっと、寝るね。 お、お休み…………」
謝罪をすると部屋に戻っていったのです。
こうして今回の決戦前夜。
夜這いを行う為の下準備はことごとく失敗に終りました。
ですが私は諦めません。
いつかルシアさんが私に夢中になるその日まで!
「負けませんよ、勇者さん! 貴女から絶対ルシアさんを奪って…………!」
「むうぅ……。 うるさい、ルーネ……。 静かにして…………」
「す、すいません、エリンさん……。 お、おやすみなさい……」
「ん…………」
………………ハァ…………もう寝よう……。
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