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第1章 -4「相模湖から」
重い夢を見た朝は、身体も重い。
目覚まし時計を見ると、時刻は午前5時を過ぎたところ。まだ起きるには早い。けれど、寝直すにも微妙な時間だ。
腕に力を入れて、ぐずぐずと上半身を持ち上げる。足をベッドから下ろすと、畳の上に敷いたカーペットのわずかに沈むような感触が足の裏を受け止める。顔の脇から滑り落ちる髪を手ぐしでかき上げながら、のったり立ち上がる。
窓辺に寄ってカーテンを開くと、日の出を迎えた外の景色は明るさに満ちていた。窓の木枠に取り付けられた、昔ながらのネジ絞り錠をくるくる回して鍵をあける。滑りが悪くて小さくカタカタと音を立てる窓を引き開けると、少しひんやりとした春の空気が頬をなでる。
相模湖を囲む山の麓、でも湖岸よりはかなり高いところにあるこの家からは、庭を縁どるような木々の向こうに水を満々とたたえた青い湖を見ることができる。
窓枠に腰を下ろして外を眺めていると、窓の外ばかり見ていたころを思い出す。
ずっとずっと待っていたから。迎えに来てくれると信じて。
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