過去と現実

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「もし谷開君が今日再会した元カノとヨリ戻すことになったら、すぐに教えてね」 話す言葉と背中に書かれている文字は合致しない。ひたすら【やがい】と書いているのは分かっている。 「ヨリ戻すとかないって」 「いざ話すときに、あたしのこと可哀想とか思って遠慮もしないでね」 「奈都、」 「1人になっても、あたし大丈夫だと思うから」 振り返って奈都の手首を掴むと、弱々しい笑みで俺の顔を見つめている。 初めて会った日の夜、帰るタイミングで『飲み直しませんか?』と俺に話しかけてきたのは奈都だった。飲み足りなかったこともあり、『いいですよ』と頷けば『ありがとうございます』と丁寧にお礼を言われた。 てっきり他のメンバーもいると思ったのに、別のお店に歩き出したのは俺と奈都だけで。 1軒目のお店にいたとき、枝豆ばかりを食べていた奈都は心配になるほど飲んで、そこで彼氏にフラれたことを俺に話して、フラフラになって、 『……』 千鳥足になっていたのはたぶん俺もだった。 朝目覚めると、ホテルのベッドの上にいた。ベッドの下に落ちている服は昨晩着ていたものだった。隣で寝ているのは、昨晩初めて会った彼女だった。 ガンガンする頭に手を当てながら、これが俗に言う酔った勢いで行為に及ぶ、ワンナイトというやつかと思った。
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