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どうするべきか。彼女を起こせばいいのか、自分だけ先に帰ればいいのか。二日酔いで上手く機能しない頭を抱えたまま、もう一度奈都を見ると無防備な寝顔があって。
このまま寝かしておこうと思った。
なぜこんな展開になったのか彼女に聞きたい気もあったが、どうせしょうもない理由だろうと決めつけた。下手に顔を合わすことなく、何もなかったことにして帰るのが一番だ。
そう、こっちとしては、もう一生会わないつもりでいたのに。
『……谷開君』
シャツに腕を通す俺に聞こえたか細い声。
やっべえ、と引き攣った頬を隠すことなく彼女を見下ろすと、ギュっとボタンも留めていないシャツを掴まれた。
まだ眠そうな瞳は、居酒屋で酩酊状態になりかけていたものと似ていた。
『また、会ってくれないかな』
『……え』
『友達として』
『やー……友達って言われても』
『そういう友達、として』
『……寝起きに何言ってるんですか?』
『……お願い』
『……』
正直思った。この女何なんだ、と。
女からセフレを持ちかけてくることなんかあるのかと、シャツの右腕だけ通した半端な状態で心底理解に苦しんだ。
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