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押し黙った奈都が俺の手を振り払おうとするから、ギュっと強く掴んだ。そのまま引き寄せると、奈都の膝がガクンと折れて前に倒れ込む。
簡単に受け止められるほど奈都の身体は華奢だった。彼女が離れる前に頭を掴んで顔を近付けると、奈都は「今日ね」と既の所で口を開く。
目の前にある双眸は少し憂いさを孕んでいる。
「元カレに会ったの。うちの会社と取り引きしてるから、会うことは仕方ないって思ってる」
「……」
「普通に‘お疲れ様です’って挨拶されて、なんか、あたしと付き合ってたことなんてなかったことにされたみたいですごいムカついた」
言葉のわりに、悲しそうな顔をしていることを奈都自身はきっと気付いていない。
「だから、それ忘れたい」
奈都はキュ、と俺の肩を掴む。
「忘れたいから、めちゃくちゃにして」
「変態じゃん」
「……お腹鳴っても、分かんないぐらいに」
「どんだけ激しいのそれ」
奈都の髪を耳にかけ、露わになった輪郭に唇を這わせる。抱きついてきた奈都を抱え、ベッドに移動しながら耳を柔く噛むと「んっ」と甘い声が漏れる。
ベッドに仰向けに寝かせた奈都は、未だ物憂げな表情で俺に手を伸ばした。
「凪央……」
単純に、さっきまで普通に勤務していた年上の女性が、年下の男子大学生に激しいセックスを求めてくることがあまりにも淫らで。
奈都の服の中に手を忍ばせながら、いつも脚を出している藤田より断然こっちの方が興奮材料になると思えた。
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