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「あたしを試してるでしょ。谷開君」
ニットの袖を捲り、ドンとテーブルに肘をついた。白菜を持っていた俺は無言で彼女を見返す。
「その‘元カノに会った’っていう報告。あたしがどんな反応するか試してるでしょ。あたしが何の変哲もないリアクションだったから気に食わないんでしょ」
「……別に」
「あたしが谷開君の想像してた反応したら、よっしゃとか思って喜ぶんじゃないの」
「さっさと鍋食べれば」
「あたしにどんな反応を求めてたの?正解教えてよ」
彼女の垂れ目がちな瞳はさっきから俺を睨みつけていた。試す意味なんて含んでいなかった。ただ「今日はどうだった?」って聞かれたからあった出来事を答えただけで、それ以上もそれ以下もない。
だから、正解を教えてと言われても、困る。
空中に視線をくぐらせると、鍋から上がる揺らめく湯気に気を取られた。もう一度彼女に焦点を戻し、「ちょっと前に」薄く口を開く。
「夏に中学の時の友達と会って、いろいろ話聞いたことが影響してんのかも」
「話すり替えようとしてない?」
「久々に会ったらそいつ中学の時付き合ってた子と復縁してた。大学生になって再会したらしい」
菜箸を片手に彼女は「再会」と呟いた。そう、再会と俺が繰り返せば彼女は姿勢を少し前のめりにした。
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