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「連絡先知ってた方が誘いやすいよ?」
「……」
店員が商品をスキャンしていく中、藤田はまだ俺に話しかけてきた。耳にイヤホンを付けておくべきだったと後悔。
「白井を通して言ってくれればいい」
「あたし谷開君と2人だけで遊びたいんだよ」
「……」
「ねえ、だから、」
お金を払い、商品を持ってスタスタと出口へ向かう。藤田はコンビニに用があって来たわけではないのか、何も買うことなくそのまま俺についてきた。
向かう先は大学で、それは藤田も一緒のはず。つまりはこのまま執拗に話しかけられるわけだ。
「連絡先教えて?谷開君」
「……」
今日は寒いわりに天気は良い。横に藤田がいなければ、もっと清々しい気持ちでいられたのに。
「谷開君が教えてくれないなら、白石君から聞いちゃうよ?」
「あのさ、藤田」
横断歩道を渡りながら横目で藤田を見ると、大きすぎる瞳に捉われて違和感しか感じなかった。
「俺、別に藤田に興味ないんだよね」
「え……?」
「だから、あんま俺に話しかけないでほしい。しつこいとマジでイライラす、」
そこまで言って気付く。藤田の目から涙が零れていることに。
嘘だろ、と自分でも止められない引き攣った頬を見て、藤田はグズグズと余計に泣く。
「っそ、そんなこと、言わないで」
「……」
「なんであたしに冷たいの?谷開君……」
「……」
「あたし何か、した?嫌われるようなこと、した?」
特に何かされたわけじゃないのに拒絶してしまうのは、たぶん生理的に受け付けないというやつ。
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