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「うっ……うぅ……」
「……」
朝から面倒だった。今日の運勢は最悪だと思った。
生理的に無理な藤田をこのままほっときたい。でも、泣いてる人を簡単に見過ごすわけにもいかない。
かといって上手い慰め方も分からない。
「……泣き止んでくんねぇかな」
頭を掻きながらそう伝えるが、藤田は俯いて肩を震わせている。心に降り積もるストレス感じながら、藤田の腕を掴んで横断歩道を渡り切った先にある電柱の前まで連れて行く。
「藤田」
「……うん」
返事はしてくれる。でも、まだ涙を拭っている。下手なことを言えば、また泣かせてしまうかもしれない。いちいち言葉を選ばないといけないのは至極面倒だ。
「……あのさ、別に藤田に限ったことじゃないから。藤田以外の女子に連絡先教えてって言われても同じように断ってる」
「……どうして?谷開君、彼女いるの?」
「いないけど。誰かと連絡取ったりすんの得意じゃねぇから」
「あたし、谷開君のこと好きなの」
「は……?」
朝の9時。突然の告白。面食らった。
泣いて鼻を赤くした藤田が上目遣いで俺を見つめている。「好き」ともう一度口にする。俺は唖然とするしかない。
「付き合えないなら、彼女にはなれないんなら、あたし、セフレでもいいよ?」
「……」
「それじゃダメ?」
俺にそういう関係になることを求めてきたあの日の奈都と、今目の前にいる藤田が重なり合う。
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