499人が本棚に入れています
本棚に追加
こうもセフレを持ち掛けられる俺は、やっぱりセフレに向いている人間なのか、なんて。
一生ちゃんとした恋人もできないまま定年を迎えそう、なんて。
「ごめん。間に合ってるから」
心の中で自嘲的な笑みを噛み殺しながら、藤田からの誘いを断る。
目を見張った藤田に、心が揺らぐことは一度たりともない。
「そういう相手が欲しいなら俺じゃなくてもいいだろ。白石でも当たれば?」
「……」
「あと、あんまりカラコン似合ってない」
そう言えば、中学の時。同じクラスの女子に思いきり脚を蹴られたことがあった。俺はその女子に思ったことをはっきり言って、案の定ガチ切れされた。
めちゃくちゃ痛かったのを覚えている。もしかしたら藤田も俺を蹴飛ばすんじゃないかと思ったけれど、藤田は何もしなかった。何も言ってこなかった。
「じゃあ」
涙も止まった藤田をその場に置いて大学へ向かう。
さすがに藤田はもう俺を誘ってこないだろう。むしろ嫌いになっただろう。こんな奴だったのかとガッカリもしただろう。
そっちの方が断然都合がいい。
「何かあった?」
今日は俺の部屋に奈都が来ていた。行為後、頭の後ろで手を組んで白い天井を見上げていると、奈都がうつ伏せの体勢でチラリとこっちを見る。
「なんで?」
「谷開君、今日会った時からボーっとしてる。シてるときは普通だったけど」
「勝手に人を観察するなよ」
「いつもと様子違うと見ちゃうでしょ?」
最初のコメントを投稿しよう!