約束と代償

5/45
前へ
/180ページ
次へ
奈都はシーツの上に頬杖をつく。なんとなくその手を掴むと、頬杖は外れ、ボスンっと奈都は顔面からベッドに落ちる。 すぐに起き上がった奈都はベチン、と俺の腕を叩いた。 「もうっ、やめてよ」 「めっちゃ見てくるからだろ」 「谷開君ってあたしが年上だってこと忘れてるよね」 「俺より小さいし」 「たまには‘奈都さん’って呼んでほしいな」 「奈都」 「……生意気だなあ」 呆れたような溜め息。仰向けに寝転がった奈都は布団の中に入り込んで「何かあったの?」とやっぱり同じことを問う。 真っ直ぐに見つめてくる奈都の目が、さっきまで快楽の熱に冒されていたなんて信じられない。たまに行為中だけは、奈都がすごく大人に見えることがある。 「奈都おねーさんに話してみなよ?凪央君よ」 「なんかうざいよ。そのキャラ」 「男子大学生の悩み聞いてあげる」 「別に悩みなんかないよ。ただ告白されただけ」 「え?告白?」 ベッドから起き上がり、下着を穿いて冷蔵庫から水を取り出す。飲みながらベッドに戻っても、奈都は驚きを見せたままだ。 「ま、まさか、例の再会した元カノから?」 「なんでそうなんの。会ってもないから」 「えーじゃあ誰から告白されたの?友達?」 「友達ではないかな。ただの同じ学科の人」 「……付き合うの?」 「まさか。断った」
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

499人が本棚に入れています
本棚に追加