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泣いていた藤田が脳裏に浮かぶ。もしかしたらあの涙は演技だったのではないかと思う俺はかなり思考が歪んでいるのかもしれない。
ベッドに座り、もう一口水を飲むと下方から強い視線を感じた。奈都が俺の顔に穴が空くほど見てくる。
「何だよ」
「もし、谷開君に彼女ができたらこの関係って終わるよね?」
「心配しなくてもできねぇよ」
「でも、この関係が終わるきっかけってそれくらいじゃない?」
「……」
そう言われて、奈都との終わりを想像してみた。いつ、どのタイミングでセフレが終わるのか。
やっぱりそれは、どちらかに恋人ができたときになるのだろうか。恋人がいるのに、他の人と身体を繋げるのは立派な浮気だ。
「もし彼女できたら言ってね」
奈都が俺の手からペットボトルを取り上げる。
「さすがにあたしも彼女いる人とできない」
「奈都も彼氏できたら言って」
「お互い一生恋人できなかったら、あたしと谷開君ずっとセフレのままかな?」
「奈都はダメだろ」
俺は奈都の手からペットボトルを取る。目を見開く彼女に顔を近づけたら、もっと戸惑いが窺えた。
「一生このままなんてダメ。元カレ見返すぐらい幸せになれよ」
「……」
「俺とのこんな関係、幸せだって言えないだろ」
自分たちの都合や欲を満たすために会うことは、一時的な繋がりにすぎない。
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