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「つまり、谷開君も今日元カノと会って復縁したって話?」
「まさか」
今日は朝ご飯を食べて以降、固形物を口にしていなかった。だから、目の前にある鍋をめちゃくちゃ食べたかった。我慢できず、よそった鍋に箸を伸ばすと「違うの?」と彼女は首を傾げる。
「谷開君もその友達みたいにより戻したってことじゃなくて?」
「戻してたら奈都のとこ来ないよ」
俺がそう言った直後、垂れ目は狼狽えたように揺れた。綺麗に切り揃えられた前髪をグシャっとしたくなった。奈都は口をへの字にして、菜箸でツンツンと鍋の具材を触る。
「出た。またあたしを試すような感じの言葉」
「そんなつもりない」
「谷開君は不安なんだろうね。相手に試すこと言って、返って来る言葉次第でその人が自分をどう思ってるか判断しようとしてる」
「バイト終わりで疲れてるから気難しい話しないで」
「あたしに対しても不安があるってことだよね」
もうこんな話は終わりにしようと遠回しに伝えても、奈都は自分が言いたいことを言い終えるまで止めない。お茶を飲みながら上目で奈都を見ると、「そうでしょ」と彼女は勝手に決めつけてくる。そんなことはない、そんなことは。
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