約束と代償

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「明らかに藤田も凪央弥のことしか見てねぇよな。俺にもワンチャンあるかと思ったけど、一生チャンスが巡ってくることなさそうだわ」 「諦めんなよガンバレ」 肩を落とす白石を適当に流し、文房具店に足を踏み入れる。B5サイズの100枚入り。ドット入り罫線のルーズリーフを好む。 「凪央弥ってやっぱどっか冷めてるよな」 いつも使っているルーズリーフを見つけて手に取ると、白石が隣で呟いた。キャップのつばを触りながら白石は俺を見ている。 「普通さ、藤田みてぇなエロい子に言い寄られたら手出すだろ?付き合うかどうかは置いといて遊びたいって思うのが男ってもんだろ」 「……」 「でも凪央弥って完全スルーじゃん。もしや好きな女の子でもできた?だから藤田になびかねぇの?」 俺の肩に腕を乗せる白石。真相を探るようにマジマジと見られる鬱陶しさに、俺はバシリとキャップのつばを強く叩いた。「うお!」と声を上げた白石を放置し、スタスタとレジへ向かう。 アホらしい。そもそも好きな子がいたら、俺は奈都とセフレになんかなっていない。奈都が元カレを忘れるために俺とセフレになることを持ちかけたとしても自分の体を利用させない。そんな時間があったら、俺はその子にアピールする。 「……」 まあ、そんな感覚、もう何年も経験していないけれど。
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