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「ん……っ、や、」
甲高い声によって、意識がスっと現実に戻された。俺の下には奈都がいて、指が2本奈都の中に入っている。
ギュっと力強く俺の腕を握る奈都はとても苦しそうな赤ら顔で「凪央」と俺を呼ぶ。ちなみに俺の本名は凪央弥だ。
普段のように‘谷開君’と呼ぶことができないほど、奈都には余裕がない。
「なに?奈都」
「なに、じゃない!早く、早く抜いてよ、指」
「奈都イったっけ?」
「イっ、い、ったし!だから抜いて!やだ!」
腕をバシバシと叩かれて痛かった。自分の手で奈都を絶頂に追いやったくせに、俺はその記憶がないらしい。完全に意識は過去へ向いていた。
「ねえ、やだ、早く」
奈都をベッドに沈めて、いつものように攻めて、その都度見える奈都の反応が面白くて好きだった。嫌だと言いながらも、俺を求める奈都を見ると、年上の奈都にも勝った気になれるから。
いつもそうなのに、今日5年ぶりに元カノと会った影響で、今この瞬間に意識を繋ぎ止めることができない。勝手にどんどん過去へ戻ってしまう。
「凪央、指抜いてよ」
「抱き締めて、奈都」
「指抜くの先だよ」
「……うるさいな」
ボソっと呟いたそれが奈都にも聞こえていたらしく、奈都は困ったような顔をしながらもそっと俺の首に腕を回した。
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