過去と現実

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引き寄せられると鼻の奥に奈都の甘い香りが広がった。至近距離でお互いの顔を見つめ合っていれば、どちらからともなく唇を触れ合わせていた。 しっとりと水分の多い口付けの中に吐息が混ざる。奈都の甘さが溢れ出す。引き抜くどころか指で細かく中を刺激すると、奈都の腕にいっそう力が篭った。 「……っあ、ダメ、凪央……」 思い出す。初めて奈都と身体を重ねた日のことを。友達がセッティングした飲み会の場に奈都はいた。 大学生の男たちの正面に座っていた4人の女性はみんな年上だった。俺の友達とバイト先が同じらしい女の先輩が連れてきた3人の中に奈都はいた。 よそよそしい笑顔を見せて挨拶をした奈都は、ちょうど俺の真向かいに座っていて、ずっと枝豆を食べていた。 視線は斜め下に向いていて、あからさまに作られている壁を壊そうとも思わなかった。全く楽しそうに飲んでいない奈都に特に興味も湧かず。 『あ、』 皿の上に置いていた俺の箸が下に落ちて、取ろうと手を伸ばすと、なぜか奈都も同じ体勢をとっていた。テーブルの下で目が合うと、奈都は驚いた弾みでガンっと思いきり頭をぶつけた。 『痛っ!』と声を上げ、目に涙を滲ませる年上の奈都を見て、なんだこの人……と思った時もしかしたら興味が惹かれたのかもしれない。
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