第一章「俺と”あの子”と4人の魔女」

2/4
前へ
/150ページ
次へ
 現在時刻は午前7時。なんかシャレオツでシェアハウスっぽいリビングの中心にて。 「ごめんなさいです。さっきのはちょっとやりすぎだったです……」  冷静になったのか、はたまた俺と密着していたのが恥ずかしくなったのか。とにかく現在、合法ロリっ子、もとい芦屋さんは随分と反省した様子で俺の隣に座っている。 「えっとさ、その……さっきの『告白してほしい』っていうのはどういう意味なの? も、もしかして芦屋さんは俺のことがす、す、好きだったりするのかな!?」  いきなり告白とかどうせ何か裏があるに決まっているが、それはそれとしてめちゃくちゃに動揺している俺である。 「その、申し訳ないのですが、私が岩崎さんを好きなのかどうか、というのは教えることができないです。ル、ルール違反になってしまうので……」 「ん? ルール? ルールって何のこと……?」 「えっと、ですね。私たちが岩崎さんと、この家──『魔女ハウス』で暮らしていく上で、いくつかルールがありまして。それで、その中に『私たちは岩崎さんに告白してはいけない』というルールが存在しているんです」 「……はい?」  私『たち』? 魔女ハウス? ルール? なんだよそれ。意味わかんねぇ。  つーか、それより……さっき、俺が今日からここで暮らす的なこと言ってなかったか? 「ねぇ、芦屋さん。お、俺は今日からこの家で暮らすってことになってるの?」 「えぇ、そうですよ。今日から岩崎さんは私たち5人とシェアハウスをするんです。もしかして知らなかったですか?」 「全く知らなかったっすね、ハイ。今始めて聞きましたね」  いや、マジでどうなってんだよ。 「そうだったんですか……私たちは1週間くらい前に岩崎さんのことについて、こと細かに説明を受けていたので。てっきり岩崎さんは魔女ハウスのことを知っていると思ってたです」  なるほど。つまり何も知らされていなかったのは俺だけだと。ていうか魔女ハウスってマジでなんなの。  いかんいかん。マジで状況の把握が出来ん。情報が足りなさ過ぎる。  えーっと、なんだ? つまり俺は芦屋さん+αの人たちとシェアハウスをすることになっていて? さらに芦屋さんはなぜか俺のことをある程度知っている、と。  あっはは、いやいや。マジでワケわかんねぇんだけど。 「あのさ、芦屋さんは俺についてどんな説明をされたのかな? なんか1週間くらい前に説明を受けたって言ってたけど」 「えーっと、私たちが聞いたのは岩崎さんの経歴とか、家族構成とかですね。岩崎さんが大手企業の御曹司で、今は東都大学に通っている21歳の男性だということを知らされたです。あー、あとは身長が180cmで体重が70kgということも聞いて、あとそれから」 「OK、ストップ芦屋さん。君が俺のことについて詳しく知っているっていうのはよーく分かった」  要するに俺の素性はほぼ明かされてるってことか。プライバシーもへったくれもないな。  うーん、あと、気になることといえば。 「その『説明』はどこで誰から聞いたんだ?」  まあ十中八九、俺の身内の仕業だろうが。 「1週間前にここで聞きました。説明してたのは『岩崎家の執事』を名乗る方です」  チッ、あのクソジジイかよ。つーことは今回のシェアハウスを仕組んだのは間違いなくウチの親だな。  よし、細かいことはよく分からんが大体の事情は把握できた。要するに昨日、俺は酔い潰れたタイミングで岩崎家の者から半分誘拐のような形で宴会場から連れ去られて、この家に放り込まれたということだろう。  で、ウチの親がどんな思惑を抱いているのは分からんが、今日から俺は突然シェアハウスを始めることになった、と。なるほどそういうことか。全く納得できんが、一旦受け入れよう。  となると、あとは他の同居人とやらがどこに居るかって話になるが…… 「あのー、芦屋さん? 芦屋さんはさっき私『たち』って言ってたよね? それってつまり、この家には芦屋さん意外の人も居るってことだよね……?」 「はい、そうです。そろそろ起きてくると思うんですが......あ! 今皆起きてきたみたいです!! おーい、皆ー!! おはようですー!!」  そう言って、リビングの端にある階段の方を指差した芦屋さん。どうやらこの家で暮らす同居人とやらが2階から降りてきたらしい。  さて、どんな人たちなんだろうな。とりあえず俺と気の合う(ヤツ)が居てくれれば嬉しいんだが。  なんてことを呑気に思いながら俺は芦屋さんが指を差す方向を見てみる。  だが、しかし。その光景を見た俺は── 「はぁ!?」  ただただ戦慄するしかなかった。 「おはよう凪沙ぁー。早起きだねー。あ、お前が大河だな! 今日からよろしくぅ!!」  先頭を切って階段を降りてきたのは、やたらと際どいタンクトップ姿の褐色金髪ギャル。その薄い服から溢れそうになっている2つの塊に目が行ってしまうのは、決してイヤらしい気持ちからではなく、あくまで男の生理現象であるということを俺は主張したい。 「あ、凪沙っちおっはよー! お、岩崎っち来てるじゃーん!! やっほー! 岩崎っち、おっはー!!」  続いて階段を降りてきたのは、やたらモコモコしたピンクの水玉模様のパジャマを着ている、テンション高めの美少女。特徴は白い肌に茶髪のショートカットがよく似合っているところだろうか。あくまで俺の偏見だが、今まで何人もの男を勘違いさせていそうな雰囲気を持つ女の子だ。 「あら、凪沙ちゃんったら。抜け駆けはズルくない? もうっ。先に大河さんを誘惑しようと思ってたのは私なのに」  その後ろを降りてきたのは……なんか、こう、色っぽい。とにかく妖艶な美女だった。着てるのは普通のグレーのパジャマなのになぜか色気がある。別に露出が多いわけでも無いのになんか色気がある。喋り方とか目の下にホクロがあるのとか、なんかそういう雰囲気的な色気が溢れている。黒髪ロングヘアーという髪型も相まって、さらに大人っぽさが増しているような印象を受ける。 「あ、大河くん来てる! おはよう皆……今日も暑くて鬱陶(うっとお)しい朝だね……」  最後に階段を降りてきたのは、なんというか大人しめで暗い印象を受ける女の子だった。なんだろう。こういうのを文学系少女というのだろうか。とにかく眼鏡をかけていて、教室の端で本でも読んでいそうな女の子だ。髪が少しボサついているように見えるが、あれは天然パーマなのだろうか。もったいないな。きちんとオシャレをすれば、光りそうな良い素材(パーツ)を持っていると思うのだが。  ていうか── 「5人全員女の子かよ!!!」  ──かくして俺のハーレム(?)生活の幕が上がった。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加