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デートウィーク1日目を終えて、俺は考えた。この企画では『俺のために用意されたデートコース』ではなく、『4人が行きたいところ』を回るべきではないか、と。彼女たちの趣味嗜好を理解し、そこから正体を探るきっかけを見出すべきではないか、と。
というわけで昨夜、俺はその旨を4人全員に伝え、申し訳ないと思いつつも、デートコースを再度考え直してもらうことにした。俺を喜ばせるためのプランではなく、彼女たちの希望マシマシのプランを考えてもらうことにしたのだ。
そんな中で迎えた本日、デートウィーク2日目。
「お、お待たせ、大河くん……」
一日目と同様に、あえて互いに家を出る時間帯をズらして噴水広場に集合。『女子ってのは待ち合わせが好きな生物なのかな』なんて、取るに足らない推察を浮かべつつ、快晴スカイの下、トレードマークのメガネに日光を反射させている彼女と向き合う。
「……」
「……」
「え、えっと大河くん? 無言で立ったままでいられると、さすがに私も困っちゃうんだけど……」
「あ、ごめん。なんというか、その……千春さんの服装がいつもと違って、少しびっくりした」
「え? ああ、うん……ありがとう?」
首を45度に傾け、微かに苦笑いを浮かべてこちらを見上げている彼女は一瞬、別人かと思ってしまうほどに普段とは異なる容姿をしていた。
いつもは少し天パー風にボサついている短めの黒髪も、今日はその面影が無い。風に靡かせている髪の毛の一本一本が、サラサラと、きめ細かく揺れている。
服装にしても、そうだ。これまではほとんどジャージ姿しか見たことはなかったが、今日は鮮やかな水色のブラウスとロングデニムという、ファッション誌にでも載っていそうな大人コーデになっている。心なしか、口紅の色も濃い。
「なんかこういう言い方だと失礼になっちゃうかもだけど、まさか千春さんがこんなにオシャレだと思わなかったよ。出かける時はいつもそんな感じなの?」
「いや、いつもはもっとラフな感じだけど……そ、その、今日は大河くんとお出かけだから、私なりに頑張ってみようかな、って……」
「な、なるほど」
「う、うん……」
そう言うと、千春さんはプイッと目線を逸らし、顔を赤らめながら手の甲で口元を抑えた。
ちょっと待て。なんなんだ、その反応は。なんかこっちまで恥ずかしくなってくるじゃないか。
──と、なんだか甘酸っぱい気分を感じていた刹那。
「っ! た、大河くん早く行こっ! 服の感想は十分聞かせてもらったからっ!!」
柔らかくて小さな手が突然触れたかと思えば、未だに大赤面状態の千春さんが俺の手を引っ張り、競歩選手もビックリなスピードで歩き始めた。
「わっ、ちょ!? ま、待って千春さん! なんで手引っ張ってるの!? てか、速くない!?」
「……は、恥ずか……くて……顔を見られ……ないから……今だけは私の後ろに……」
「ごめん、なんて……?」
「! と、とりあえず今だけは大河くんに私の後ろを歩いててほしいの! ほら行くよ!」
「うわっ、ちょ!? だから速くない!?」
さらにグイグイっと俺の腕を引っ張り、歩行ペースを上げる千春さん。どうやら今日は見た目だけではなく、態度も普段とは随分異なっているようだが……果たして、その変化の真意や如何に。
デートウィーク2日目。音崎千春と過ごす一日は、予想以上にロケットスタートな幕開けとなった。
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