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「キミは何を想う」
ようやく暑い暑い夏が終わり、いつの間にかセミの声から秋の虫の声に替わった。
街の通りも店先も色とりどりの色彩へと変化している。
街中を歩く人達は、何故か忙しなく歩むスピードも歩幅もーー。
私もその中の一人。
もうすぐ今年も終わる。
暑い夏、思うように動かなかった体もようやく終わった夏に解放されたかのように。
「芸術の秋、読書の秋、スポーツの秋、なんと言っても食欲の秋!」
何故か心も浮き立つ。
それに秋は短い!!油断をしているあっという間に冬になってしまう。
そう!秋こそ満喫しなくちゃ!!
仕事も、趣味も頑張らなくちゃ。
寒くなる冬の前にーー。
今年が終わってしまうその前にーー。
詰め込みすぎていることも気にならず、突っ走っていく。
ふと見渡してみつけたベンチは寂しそうに誰かが気づいてくるまでじっと待っていた。
「そこから何が見えるの?」
寂しそうなベンチは、全然寂しいベンチではなかった。
抜けるような秋の濃い蒼の空に白い雲の一筆書き。
遠くで子供達が走り回り、夏と秋で遊んでいる。
同じ色に見えて同じいろではなくなった木々の葉たちが地面にひらひら落ちる前に私達に魅せてくれる大切な贈り物を届けてくれている。
私はそっとベンチを立ち上がりそっと語りかけた
「ありがとう。素敵なものを・・・・」
≪完≫
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