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最終話
「ねえ、一瞬意識どっか行ってたみたいな顔してたけど大丈夫?」
「え?」
そうなの? としか…… まぁいいか。 俺はもう良いだろうと思って愛菜を今日の放課後に話したいことがあると言った。
愛菜も察しがついたらしくて「うん」と頷く。
「ふーん、本庄さんに告白するんだ? またって感じだけど」
「ああ」
「なんでそれをわざわざ私に?」
また面倒なことになるのはごめんなので渚に打ち明けた、これでまた面倒になるかもしれないが。
「なんとなく。 お前にはちゃんと言った方がいいかもしれないと思って」
「お生憎様、私はもうあっちゃんなんて知ったこっちゃないもん。 精々下手こかないように頑張れば」
渚は突き放すようにそう言って行ってしまった、そんな渚に背を向けるが気付かれないように目の端を後ろに集中させると渚の視線を感じるような気がする。
表面上は特に何事もないようだけど俺に対する何かをまだ渚から感じるけど……
今は愛菜とのことだな。
俺は愛菜を待たせているテラスの場所へ行くと座ってベンチに座って本を読んでた愛菜が居た。
「待ったわよ、何してたの?」
「悪い」
俺が近くに行くとベンチの真ん中に座っていた愛菜がズレて隣に座れば? の仕草をしたので座った。
「それで? 話って何?」
「大体察しはついてるんだろ?」
「そうね、でも久し振りに訊きたくなった」
俺は「ふぅ」と息を吐いた。
「愛菜、好きだ」
そう言うと愛菜は読んでいた本を閉じて俺を見つめた。
「…… 私もよ新太。 好きだよ」
「え? キスするの?」
「何よ、イヤなの?」
「いや、意外だなって…… そうでもないか」
「次は私からするって決めてたからいいの」
◇◇◇
「あー、2番目の女だからそんなツレない顔してるんだ?」
「違うっての、走ってきたから疲れただけ」
そう、走ってきた。 この35歳の身体の時は前ほど筋トレとかしてなかった、だから歳のせいもあってか結構疲れる。
だが俺からしてみればついこの間まで高校生でこうしてよく走ってたからかなりのギャップを感じてしまう、そして俺の日常には愛菜が居た。
愛菜が本当に死んでるなんて信じられなくて調べてみたら本当に愛菜は自殺していて愛菜が居なくなった現実を受け止めるしかなかった。
これが俺への罰……
「そんなに走って楽しいの?」
「楽しくはないかな」
「変なの、じゃあ体鍛えて浮気でもしようとしてるんじゃないの?」
「もうしないって。 渚が居るしな」
でも皮肉にも渚のことが好きになっていた俺。 こんなことがなかったら多分そうはならなかったんだろうけど俺は渚が好きだ。
愛菜が居ないから渚を選んだみたいな妥協みたいな結果に思えるかもしれないが。
「結婚式楽しみ!」
「ああ、良い式にしような」
妥協なんかじゃなく今の俺には本物になっていた。
何故か両方に分かれてしまった俺はどちらもそんなふたつの結末が存在してたなんて知らないが幸せになっているみたいだ。 愛菜と渚、2人が居たからどちらの俺も幸せになれた。
だから俺にとってはどっちもかけがえなもない存在でこうなってしまって両者の俺はどう思うかわからないがこれはこれで丸く収まった。
「同じ大学に行けて良かったわね新太」
「ああ、愛菜にみっちりしごかれたけどその甲斐あったな」
「まぁ無理そうだったらあんたに合わせてあげたけどね」
「優しいな愛菜は」
「だって新太のこと好きだし」
「あっちゃん!」
「なんだよ急に?」
「なんだと思う〜??」
「…… 体重減った?」
「違うッ!! 赤ちゃん出来たの!」
「はッ!?」
「嬉しい?」
「あ、当たり前だろ! そっか、赤ちゃんか」
やはり幸せには変わりないみたいだ。
fin
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