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朝、目が覚めると、頭がくらくらするよね。
それって夢の中で会っていた人がまだ現実に戻らないでと頼んでいるからなんだって。
おばあちゃんが言ってたもん。きっと本当。
***
「うん。明日帰るから。夕方ごろ。」
おばあちゃんが亡くなった。死んだ。昨日の朝。
朝学校に行くとき、電車に乗るとき、電話が来たの。
もう電車に乗ってたから降りられないでしょ?
だから私、学校に行った。
泣きはしなかった。
というか、
泣けなかった。
ひどい孫だよね。自分でもそう思うから。
でもさ、大切な人が死んだときって泣けないよね。信じられないっていうか、
帰ったらまた笑顔で出迎えてくれるんじゃないかって、思ったの。
***
おばあちゃん家に着いたらもう親戚の人たちが集まっててすすり泣きをしてた。だれも声をあげて泣く人はいなかった。
お父さんも、お母さんも、お兄ちゃんも。
だけど、私は泣かなかった。必死に涙をこらえた。
なんでこらえたのかは覚えてないけど。
泣いちゃダメって言われたような気がして。
「おじいちゃんと会えたかなぁ」
そう言った。
***
私には聞こえたんだ。
「泣くな。上を向いて。
おばあちゃんは先に行っとくからね。」
おばあちゃん。
痛くないの?
なんで、なんで?
病気なんかなくなればいいのに。
***
おばあちゃんの夢を見た。
あったかいおばあちゃんの手で頭を撫でられた。
おばあちゃん。なんで私を置いていくの?
ひどいよ。ずっと一緒にいるって、約束したじゃん。
泣きじゃくる私をそっと包み込んで。
目を覚ました。
頭が痛い。くらくらする。
「目が覚めたときに頭がくらくらするのは夢で逢った人が行かないでって寂しがって頼んでいるからなんだよ。」
おばあちゃん。
寂しかったの?
おじいちゃんに会えなかったの?
私、今泣いてないよ。
上を向いているよ。
前に進むから。
どんなに辛くても、自分の道を進むから。
だから、見ててよ。
たまには寂しいからって夢に出てきてもいいから。
おばあちゃん。
すこし、我慢しててね。
夢で会ったら、
ただいま
って言ってね。
そしたら、ちゃんと
おかえり
っていうから。
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