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「こういうのを好きっていうんだな」
真思は誰に聞かせるわけでもなく呟いて、自分に言ったのだと気付く。自分を助けるのは誰でもない自分なんだ、自分の気持ちを偽らないでいること、そうするしかないんだとやっとわかったのだ。
手の中の画面に、どのように伝えれば充之に届くのか。充之ならどんな拙い言葉でもきちんと聞いてくれるだろう。確信めいた気持ちだけどきっと間違ってない。
真思がゆっくり話すのを待ってくれる、優しい笑顔を思い浮かべた。
『仕事は大丈夫だったよ』
そう返した後ちょっと考えて
『今度、僕の話も聞いてほしいんだ』
と送る。
恥ずかしいけれど顔を見て話したかった。
いつもならすぐに返事がくるのになかなか来ない。ドキドキしていると
『ちゃんと会えるのは来月の休みの日になりそう。それまで待てないから次の火曜日に真思の家に行くよ』と届く。
真思の休日だから、早番勤務を定時で終わらせて会いに来てくれるつもりらしい。その気持ちも嬉しくて、にこにこ顔のスタンプを送った。
今日はまだ金曜日なのにもう火曜日が待ち遠しい。心と一緒に身体まで軽くなるようだった。
そして、火曜日。
部屋の掃除や洗濯を済ませた真思は、スーパーで買い物をしてカレーを作り始めた。
まだ違うけれど、恋人に初めて作るメニューではないかもしれない。でも充之はきっとすごく頑張って仕事を終え、ここに来るはずだ。
お腹いっぱい食べてもらうならカレーがいいなと思った。
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