106人が本棚に入れています
本棚に追加
そして『真思』と呼び掛けられることにも違和感を感じなくなった頃、約束どおり買い物に出かけた。
6月10日、前日に梅雨入りしたがなんとか降るのを耐えているような月曜日。
田所が運転する車で大型ショッピングモールへ向かう。
真思は前回よりもさらにどきどきしていた。運転席の横顔をこっそりと覗い、気取られる前に落ちつかなくてはと膝をつかむ。
田所が「そんな感じしないけど、久しぶり」と笑うので「へんな感じだね」と返して少しリラックスできた。
「俺、ぎりぎりまで寝てて朝飯食ってないんだよ。真思は?」と聞かれて「僕もそんな感じ」と答える。
本当は早起きしたのに、なんだか食べられなかったとは言わない。
とりあえず何か食べよう、と近くで営業中のカフェを検索した。
ログハウス風の店に入り、トーストと玉子とサラダのモーニングメニューを注文する。店内は女性客のグループが何組もいて楽しそうにお喋りしている。
コーヒーのいい香りとさざめきのなかで、二人ともに「いただきます」と手を合わせた。
最初のコメントを投稿しよう!