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2.初めての浮気は不満足
道玄坂をすこし歩いて路地に入るとラブホテルが並ぶ一角がある。そこへ行く前に立ち止まり
「あ、そうだ!あのコンビニで缶チューハイかなんか買って飲もうよ。その方が安上がりだし」と言い、由美子の返事も待たずにコンビニに向かうシュート。
そのまま、店に入ってお互いに飲みたいものを買って店を出るまで、一度もどこで飲もうかという言葉は出てこない。
そして、もう一度由美子の手を握ったシュートはそのままラブホ街の方へ歩き出す。
どうしよう?今なら「今日会ったばかりだからダメ」といってやめることもできる。
でも、由美子自身も、家でシャワーを浴びるときや下着を選んでいるときにはこの展開も意識していて、いわゆる勝負下着を身に着けてきている。
信之とも、ここ数か月レスが続いていたせいもあって、今日こうしてシュートと会う約束もした。
でも・・・と迷っている由美子のことも気にする様子もなく、すこし足早にラブホ街へと進むシュートに手を引かれながら拒否をしない由美子。
由美子は今まで一度も浮気をしたことはないが、SNSやブログでは人妻の浮気が堂々と語られている今、レスの体を持て余しながら「いつか自分も」と考えることが多くなっていた。
ここまできたらもう後戻りはしない、そう決めると不思議に夫の信之への罪悪感も消えていた。
ラブホ街に入り、比較的新しく普通のシティホテルのような外見のホテルの前まで来ると「ここ、綺麗そうでいいと思わない?ここでいい?」と訊かれ、だまってコクリとうなずき、今度は由美子の方から「ここにしましょう」と言ってシュートの背中をおして自動ドアをくぐった。
もちろんそこにはフロントなどなく、無人のパネルに空き部屋を示す照明が灯っていた。
驚いたことに、半分以上の部屋が使用中。昼間からみんなやってるのね、と独り言をつぶやき、シュートの「この部屋でいい?」という言葉にまた黙ってうなずくと、すぐに307号室のボタンを押す。
「そのままお部屋にいらしてください」というコンピュータの声を聴き、エレベータに乗り込むと、シュートがいきなりキスを仕掛けてきた。
「ちょっと待って、部屋に入ってからにして」と一応は拒んでみせたが、本音はそのままキスをしたかった。
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