「TORIKA-忍術伝-」② 作者:ますあか

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「TORIKA-忍術伝-」② 作者:ますあか

「TORIKA-忍術伝-」② 酉花 Torika クラン 伊賀 Iga 忍術 毒手裏剣 Poison Shuriken 武器 手裏剣 Shuriken 花を育てるのが好き 名前は「トリカブト」から 誕生日 8月9日(◀New) ※  ※  ※ (夏のある日 人気のない森) この森の中には、人だけでなく生き物の気配がない。そして、近くに長く使われていない空き家だけが見つかった。 風魔壱「何か見つかったか?」 風魔弐「いえ、標的がいた痕跡はきれいに消されています」 風魔壱「伊賀者の仕業だな……」 風魔弐「頭に報告するぞ」 アトザ【よい、聞こえている】 ゾクッ その言葉を聞いた瞬間、ふたりの忍の間に緊張感が走った。 風魔壱「か、頭!!」 振り向くと、鴉が一羽こちらをじっと見ている。 鴉を通じて、こちらの様子を見ていたようだ。 アトザ【霊薬を創るのに必要な幻花。その娘が何か知っているに違いない。探せ!】 ※  ※  ※ (夏のある日 忍びの里 植物園) 酉花「ううん、なんで私が植物を育てると毒が発生するのかな??」 私は頭を抱えていた。 ハヤテの言うとおり、毒のある花を好んで見に来る観光客などいないだろう。 なんか私が忍びの里で貢献できることってないのかな? そんなことを考えていたとき、ふと声をかけられた。 ???「すてきな植物園じゃないか」 植物園の入り口に20代前半くらいの男性がカメラを持って立っていた。 酉花「だ、だれ?!」 気配が全くしなかった。あれ、私最近人の気配を読みとる訓練にやってたよね? 結ちゃんにも筋がいいって言われたのになあ。 おかしいなあ、調子悪いのかな? ???「あっ、俺? 俺はただの観光客だよ」 びっくりさせてごめんね、と男性は申し訳なさそうな表情をする。 なんと、お客様か。 人が全然来ないから、びっくりした。 酉花「そうでしたか。忍びの里に来てくださり、ありがとうございます」 ひと言で言うと、きれいな人だ。 黒い髪はさらさらとしていて、目鼻立ちが整っている。とくに赤い瞳は吸い込まれるほど、きれいだ。 私がじろじろと顔を見ていたことに気づいたのだろう。にこっと、笑ってこう言った。 観光客?「俺の顔、そんなに見て何かついてた」 酉花「い、いえ。何もついてないです」 なんか恥ずかしいなあ。 同じ年頃の男性は、ハヤテくらいだから。このかっこいいお兄さんと話すと、どきどきする。 そんなことを考えていたら、お兄さんが花を近くで観賞しているので思わずこう言った。 酉花「この植物園は毒草が多いから気をつけた方がいいですよ」 観光客?「そうなの? さっき、君が素手で触っているから普通の花かと思ったよ」 酉花ちゃんはすごいね。 お兄さんがそう言って、くしゃっと笑った表情を私に向けた。 酉花「な、なんで私の名前を知っているんですか」 観光客?「服に大きく書かれているじゃないか。ほらっ、背中に酉花ってね」 酉花「そ、そうでした……」 かあっと顔が赤くなるのを感じる。 恥ずかしい。穴があったら入りたい。 私の様子に、お兄さんは笑いをこらえきれない様子でこう言った。 観光客?「ごめん、ごめん。ちょっとからかい過ぎちゃったかな? ねえ、酉花ちゃんさ、もっと忍びの里や植物のこと教えてよ」 それからお兄さんと色んなことを喋った。 私が植物を育てるのが好きなこと、最近こちらに越してきたこと。 お兄さんは都内の大学生で、夏期休暇を利用して観光に来ていること。 カメラが好きで、よく風景の写真を撮っていること。 観光客?「あ、そろそろ閉園の時間だから。俺もう行くね」 酉花「また会えますかね?」 観光客?「うん。また会えると思うよ。写真もっと撮りたいからね。……またね、酉花ちゃん」 そう言って、お兄さんは夕日を背に植物園を後にした。 酉花「あっ、名前聞くの忘れちゃった」 ※  ※  ※ (忍びの里 最寄り駅前) 俺は忍びの里の警戒が外れた場所までたどり着くと、ひとりの男が近づいてきた。 風魔壱「お疲れ様です。カルマ様」 カルマ「君ね、外で俺の名前呼ばないでよ。ただでさえ、珍しい名前なんだから」 風魔壱「申し訳ありません」 カルマ「ああ、あと次の仕事がこの区域だから、宿を取っといてね」 風魔壱「わざわざ宿泊先を取らずともお迎えに上がりますが、よろしいのですか」 カルマ「いや、それ忍んでないだろう。普通の大学生が観光に来た体なんだから。わざわざ変装までして近づいたんだ。しっかり、情報を手に入れないとあいつになんて言われるか」 カルマ「さてと、仕込みはできた。あとは、どうなるか楽しみだな」 ※  ※  ※ (閉園後 忍びの里 植物園) 酉花「~♪」 ハヤテ「何だよ、今日は妙に機嫌がいいな」 俺がいつものルーティンで酉花の様子を見に行くと、見事に音程を外した鼻歌を歌いながら、雑草取りをしている酉花を見つけた。 酉花「今日ね、お客さんが来たの!」 ハヤテ「客? この植物園まで来た奴がいるのか」 酉花が担当している植物園は、忍びの里の人気エリアから大分距離がある。正直、軽い気持ちで来る距離ではない。 酉花「かっこいいお兄さんでね。また来るねって言ってくれたの!」 ハヤテ「それは、」 新手のナンパではないか?という言葉を口に出さなかった俺は偉いと思う。 ナルカミ【主~! ご意見番のもとへ至急向かってください】 ハヤテ「分かった、すぐ行く。後、酉花。閉園後の掃除当番忘れるなよ」 酉花「うん、わかった」 いつもだったら、「分かってるよ!」と言い返してくるのに素直に返事をした様子から、よほどその観光客と話せたことが嬉しいらしい。 人と接することが極端に少なかった酉花にはいいことだろう。 だが、このとき俺はなにか心の奥で引っかかりを感じたような気がした。
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