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邯鄲
小学生の頃の思い出といえば、私は決まって小学四年の秋に見つけたあの「邯鄲」について思い出す。
当時の私は昆虫採集に没頭しており、夏休みには昼食を抜いてまで幾度も足を踏み入れた学校の裏山の奥深くまで潜っていったものだ。基本的には、家の大きなゲージには日に日に入っている虫が変わる。当時の私は一度捕まえた虫は一日だけ観察したのちまた元の場所に放ったらしい。大抵夏は決まって兜虫や、鋸鍬形などを採ってくる。深山鍬形を採ってきた時はそれはそれは大層喜んでいたと母から聞いた。
夕暮れ、自ら発見した田畑の畦道から深山鍬形の入った虫籠を持った少年が、橙から段々と赤くなっていく夕陽を背に家へ誇らしく帰っていく姿は今想像すれば笑えてしまう。そんな私の夏休みは沈んでいく夕陽とともに去っていった。いつもは夏が去ると共に虫取りも月に数回程度の楽しみへ変わっていた。
だが、あれは十五夜だっただろうか?夕食を食べ終わり、祖父等に年に数回出す葉書をその日は遅い時間に出しに行った。
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