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序
……初めまして。美しい眼を持った貴方。
私、貴方のその色が大好き。ずっと手元に置いて見ていたい、そんな気持ち。私の妹たちも、きっと気に入るはずです。
……ねえ、ご存知でしょうか。
その子は私の母を褒めてくれていたから、私も母同様、特別に目を掛けていたのですけれども。少し偏屈に感じると思いますが、とても頭の良い子なので、今度よろしければ ―視― てやってくださいね。
その子――男の子なのですが、このような事を言っていたのです。
「目は心の窓だ」って。面白い事を言うなあと、その時は思ったのですが、それから私、人の眼を良く見るようになったのですね。
……暫く人の眼を観察していますと、それまでは別段気にかけていなかった、ただのガラス玉に色が宿ったように感じまして。
ようやく私、分かりました。人が生きていた中で、最も心動かされた瞬間が眼に宿るのだ、と。それって、何だと思いますか。生きている中で一番心が揺れる瞬間ですよ。婚姻や死別などではありませんよ。貴方の想像以上に、人間というものは独りよがりで身勝手な生物です。そのような他人との干渉の内に、心が大きく動かされることはありません。当人同士の錯覚ですね。
……ここで一つ独り言を。
魂には眼があるのです。
そして、眼にその人の魂が宿るのです。
まあ、これも件の男の子が言っていた言葉なのですがね。
それで、答えが分かりましたか。あら、分からないのですか。
――嗚呼、ごめんなさい。記憶がなかったのでしたね。悪い事、いたしました。
※※※※の光景ですよ。
それがね、眼に焼き付くの。
眼に色が、焼き付いて――
「ほら、こんな風に」
「綺麗でしょう? 貴方には、どう映りますか――」
霞みがかった思考の中で響く。
カラン、と二つ、何かが自身へ嵌め込まれる美しい音がした。
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