ある刀鍛冶のおはなし

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街に入る大門の前まで牛飼いと牛は送ってくれた。 去り際、手に銀貨を握らせようとした私に、牛飼いは険しい顔をする。 「見返りの為にしたわけでは、ねえだ」 朴訥な顔で笑った後 「んだば、達者でな」 牛を引き、ゆるゆると別の方向に去っていった。 日々を丁寧に生きる人の、シワの刻まれた笑みだった。 かぶりをふると、私は城を目指す。 城下町に入ると、歓声の声が次第に聞こえてきた。 「勇者様だ!勇者様達が宿を出たって!」 「見たかお前!背えよりでっけえ斧持ってたぜ!」 「父ちゃんが言ってた、あいつらドラゴンキラーだって」 「すっっげえ!!」 商店の前を、子どもたちが叫びつつ駆けていく。 頭には鍋の兜 手には伝説の木の棒 いつの時代も英雄は人気者だ。 城に近づくにしたがって、群衆が増えてくる。 裏道に迂回すると、兵士詰め所を目指す。
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