ある刀鍛冶のおはなし

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一年前 隣国の城に、天から流星が落ちた。 我が国とは友好とは言えず、近々和平交渉の会談が予定されていた矢先の事だった。 未明にその様子を見た者たちは口々に まるで神の鉄槌が打ち下ろされた様だったと語る。 一筋の光条が斜めに天を横切り、城壁に吸い込まれた。 その直後 稲光り数百分の爆発音。 轟音と共に見えない壁が周囲に広がっていく。 城下町の繁華街、居住地、スラム街が順に塵となって消えていく。 郊外の木々はなぎ倒され、獣たちが逃げまどう。 膨れ上がった衝撃波は唐突に止み 後には只、巨大な陥没のみが残った。 蟻地獄を思わせるすり鉢状の奈落 数刻後 さあ、と螺旋状に流砂がさざめく。 底の方から、黒い、黒々しいなにかが現れる…
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