盲目の弟子

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盲目の弟子

「 アテナ?…アテナ? 」 アレンが此処に来てニ年が経過した あの後、彼は戦争で疲れた身体を癒やす為に、更に五日間は眠りに落ち、 そして目を覚ませば、アテナと呼ばれる彼女が作った料理を沢山食べ、体力は戻り 目が不自由な部分は変わりないが、元々ある運動神経と野性的な感覚の持ち主だった為に、盲目である事を受け入れ、ある程度の物なら避けれ、触れる事も出来るようになった 只、獣の様に気配を消すのが上手い彼女が何処かに行くと、探す事が困難だった 「 アテナ、もう隠れん坊は終わりにしよう。俺が、君を見つけるのは苦手だと知ってるだろう? 」 小さな小屋から出て来た彼は、数歩歩いて彼女の名前を呼び、近くにある木に触れては、左右へと耳を傾ける   クスクスと笑い声が聞こえるけれど、青年はふっと後ろを振り向く 「 此処か? 」 「 残念!こっちでしたー! 」 「 っ!全く…不意打ちとは卑怯な 」 アテナは楽しそうに背中へと抱き着けば、少し困った様に笑いながら彼は背中へと顔を向け、腹に回った手へと触れる 「 そろそろ、私の気配に気付いて良い頃よ?魔女の弟子にしては、修行が足りないね 」 「 俺には魔力が無いんだ。まぁ、感覚は良いから多少料理が出来るようになったぐらいか? 」 「 フフッ、それも…まだまだね 」 此れからとばかりに彼女は背中から離れ、彼の片手を取れば少し引っ張る もつれないようなに脚を動かす彼は、自分の前に当たりそうな木を避けては、彼女の手を引くまま着いていく 「 ねぇ、アレン。さっき…山葡萄を採ってきたの、葡萄ジャムを作って、パンと一緒に食べましょう? 」 「 それは、俺にパンを作れって言ってるな? 」 「 えぇ、そうよ。だって貴方の作るパン。美味しいから 」 「 まぁいいさ…アテナが喜ぶなら 」 彼女が手を引く先は、パンが作れる台所でそこに来させた途端に手を離し、指を動かしボウルなどを浮かせ、彼の元へ置いていく 「 小麦粉に、茹でたもち麦は如何? 」 「 おっ、それは助かるな。蜂蜜にバターがあればもっといいのだが? 」 「 お兄さん此方にありますよ。ミツバチさんから貰った蜂蜜や山羊の乳から作ったバター。全てあげましょう 」   歌を歌いながら材料を渡していく彼女に、彼もまた受け取ってはそれ等を手の感覚だけでボールに入れていき、お湯を入れながら混ぜて捏ねて行く その間に彼女も横で、先程取ってきていた葡萄を一粒ずつ取り、水洗いしてはフライパンの中へと入れ火にかける 「 一つ食べてみて、美味しいよ 」 「 ん?あ、本当だな。美味しい 」 全て入れる前に自分の口の中と、彼の方に向けて食べさせれば、お互いに顔を見合わせて笑顔を見せる その笑顔は彼が見る事はないが、雰囲気で分かる為に微笑み返す 顔の火傷は半年ほど治らず、毎日包帯をやり変えては、傷が治ってきた場所に塗り薬を塗っていた それでも皮膚は何度も何度も剥がれ、包帯へとくっつき、肉が見えていたにも関わらず、 彼は一度も声を上げる事はなく痛みに耐えていた そう、訓練された兵士でもあるが… 醜い姿を手当てをしてくれる、彼女の心に打たれたのだろう 「 此れで一次発酵だな。アテナの方はどうだ? 」 「 まだ掛かりそうかな 」 葡萄を潰しながら作っても、まだ時間が掛かると告げた彼女に、彼は手を洗って、近くに置いていた布で手を拭き、背中へ周り抱き締める 三十cm近い身長差がある為に、彼は背を曲げ髪へと口付けを落とす   「 じゃ、お嬢さん…。俺と子作りしませんか?そろそろ、居てもいいと思うんだが…? 」 「 あらあら、お兄さん。゙ 俺は目が不自由だから、君の負担になる ゙とかでフったのは何方でしょう? 」 振り返った彼女もまた、軽く笑いながらその腰に腕を回せば、青年は苦笑いを浮かべ彼女の長い髪に触れては額へと口付けを落とす 「 まだ怪我も治ってない時期に誘われたから…。今はこうして完治して、色々分かる。子供欲しいな…? 」 「 私は…魔女だから、出来るか分からないよ? 」 「 なら出来るまで妊活だな 」 「 もう!アレンのエッチ! 」 「 ははっ、男なんで 」 軽々と抱き上げた彼は、そのままそっとベッドへと行き、そっと寝かせるように倒せば、上へと被さり口元に笑みを浮かべる 「 アテナ…。君を愛してるよ、俺の女神 」 「 私もよ、アレン。愛してる 」 彼はそっと口付けを落とせば、彼女もまたそっと首へと腕を回しては顔を台所の方へと向ける 「 やっぱり、ジャム作ってからでいい?焦げそう… 」 「 愛がジャムに負けた!いいけど、ジャム好きだから! 」 「 ははっ、後でね 」
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