二  章

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 ワルツが終わると、右京は相手の女性に挨拶をして、月子を探した。  月子は金髪の男に腰を抱かれて、澪子と話していた。右京は歩み寄る。辿り着く前に、澪子が右京に気づいた。 「あら、右京さん」  二人が振り返る。右京が敵愾心(てきがいしん)から冷たい視線をやると、金髪男はそれを(かわ)すように笑んだ。  右京はいつも通り、まず澪子の機嫌をとる。 「澪子さん、今夜は一段とお美しくていらっしゃる」  澪子は嬉しそうに右京の腕を取り、(まと)わりつく。 「ありがとう。———右京さん、こちらは風切出帆先生よ。去年アメリカから帰国なさったんですって。先生、こちらは、鷹司右京さん」  右京は手を差し出し、 「Nice to meet you」  と挨拶をした。風切は握手をして、 「Nice to meet you too」  と返す。 「カリフォルニアに友人がおります。友人が、あちらで事業を立ち上げるのは大変だと話していました」 「カリフォルニア州では、排斥(はいせき)運動が盛んになりつつありますからね。ご友人は、さぞご苦労なさっていることでしょう」  右京は月子を一瞥する。普段、人に興味を示さない月子が、なぜか風切をしきりに気にしている。  胸が、ざわついた。
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