終  章

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「いいわ。あなたの提案を試す。でも失敗したら、私は、私の命を捧げるから」  内心ほっとした志波は、軽口を叩く。 「外国で会うても、無視すんなよ」  疲れ切った月子が、小さく吹き出す。 「あなた、本当に面白い人ね。出会えて、よかったわ」 「あっちで会おうや」 「逃げ切って。———じゃあね」  志波は、月子の手を放した。  月子は翼をばさりと大きく広げ、羽ばたかせる。砂煙が舞い上がり、月子の体が浮き上がった。彼女はそのまま空へ上昇してゆき、浩々とした月を(いだ)く夜空に滑り出した。
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