全てを知るは雪の精

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 目を閉じていてもわかるくらい、真っ暗。  恐る恐る耳を塞ぐ手を離して、目を開けてみる。  すっかり闇色になって、月光がなければ自分の手も見えないだろう。  その月明かりさえ、目の前にあるはずの花も照らしてくれない。  霧のような雪は止んでいた。  悪魔のような祝福の応酬も止んでいる。  冷気だけが残って肌を変わらず刺し続ける。 (めでたい?)  私はゆっくり手探りで、目の前にあるはずの花を探す。  ようやく触れた細い茎は、力を入れたら折れてしまいそうだ。 (ふざけないでよ)  傷つけないようにゆっくり、優しく包み込む。  小さい。冷たい。  声を聞かせてはくれない。笑ってもくれない。 (今、どこにいるかなんて)  同じ世界にいたって。隣に在ったって。 (意味ないよ)  こんなの、孤独と変わらないよ。  どれだけ泣いても、慰めてくれる人はいない。  初雪の過ぎた小雪の夜が、相変わらず私のことを冷やしていった。
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