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追憶の星の下
彼に出会ったのは、もう10年も前のことになる。
この場所に迷い込んだ幼い私に、優しく手を差し伸べてくれた。
私たちはよく、ちょうど今いる場所で2人仰向けになって語らった。
彼の話はいつも非現実的で、それなのに嘘を話しているという感じが全くしなかった。
まるで私の住むこの世界とは違うところで育ったようだった。
彼の世界には夜しかなくて、夜が重なる日没時にしかここに来られないのだと、彼は寂しそうに話していた。
その話を裏付けるように、彼は夜になるとどこからともなく現れた。
夜空の下にいながら、私たちが星の話で盛り上がれることはなかった。
私は星を見るのが好きだけど、彼は星のことは何も知らなくて、それが持つ情緒的な意味を最後まで理解しなかった。
遠くにある光る物質が見えているだけだと、そう言って首を傾げていたっけ。
でも他の話題で、ちゃんと楽しくお話できていたと思う。
少なくとも私は楽しかった。
……楽しかったのは、私だけだったのかな。
彼はミステリアスで、儚くて、ちょっと変わってて、でも決して消えない暖かさを心の中に灯し続けているような人だった。
私はそんな彼が好きで――多分初めて会ったときから、恋していたんだ。
でも彼は私とは違った。
今となってはそう思う。確かめることもできないけれど。
3年くらい前、彼は突然来なくなったんだ。
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