追憶の星の下

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 何年かぶりに、寝転がって空を見上げる。  星は全然見えなかった。今日は雪の予報だったから。  雲が空を覆ってしまっている。  枯れた芝はすっかり冷え切って、私のことなんか歓迎してくれていないみたいだった。  隣で暖めてくれる人はいない。  私は一人。  隣にあった体温を、思い出すことさえ敵わない。 「また会いたいよ」  涙交じりの声もどこかに届くことはなく、口から出てすぐに凍って枯れた地面に落ちてしまう。  私は目を覆った。  ほんの少し温かい涙が頬を伝う。  ――それを上書きするように、刺すような冷たさが頬に触れた。  あぁ、これは。 「雪だ」  初雪が、降っている。
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