白い闇夜に包まれて

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白い闇夜に包まれて

 冷えた体に、この温かさはつらい。  だって、心の中まで浸透して、すべて融けてしまいそうになる。  涙をこらえるのに必死で黙っていたら、わずかに熱が離れていった。 「ごめん、嫌だった?」  嫌じゃないよ。  言葉がうまく出なくて、私は頭を横に振った。  動いたせいで、涙が溢れてしまった気がする。  頬が冷えていて、感覚が鈍くてわからない。  出会って早々に涙を見せたくはなくて、私はもう一度彼の胸に飛び込んだ。  懐かしい香り。体温。  鼻水をすすった音は、聞こえてしまっただろうか。  彼は私の背に手を回して、改めて抱き寄せてくれた。  こんなときに限って素直になれなくて、私は抱きしめる力を強めながらわがままを言ってしまう。 「『久しぶり』……じゃないよ。なんで来てくれなかったのっ」  彼が息を呑むのがわかった。  少し待って落ちてきた答えは、一番聞きたくないものだった。 「……ごめん」  私は彼の胸に力任せに顔をうずめる。  涙を拭いてやった動作は、許容と受け取られたかもしれない。 「手紙ありがとう」  そのせいか、彼の声はちょっと優しくなった。  顔を上げなくても彼の穏やかな表情が浮かぶ。 「今、ここにいるよ」  これは、意地悪っぽい言い方。  手紙の一文に対しての返答か。  ユーモアを交えて言ってやったと、いたずらっ子みたいな顔をしているんだろう。  そう思っていたから、涙も拭き終わって顔を上げた私は不意を打たれた。  いたずらっ子、なんかじゃない。  なんでそんなに悲しい顔をするの?
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