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「会いたいって言ってくれないの?」
目を見開いて固まってしまった私に、彼は笑顔で問いかける。
その表情の方が、むしろいたずらっ子っぽい感じがした。
「……僕は会いたかった」
心臓を止めに来てる。
これまでそんなの、言ってくれたことなかった。
死んでしまいそうなほど幸せであると同時に、だったらなおさら、なんで会いに来てくれなかったのかと言い返したくもなる。
でもさっきの彼の表情が頭から離れなくて、聞くことはできなかった。
私は何も言えないまま、彼の透き通るような瞳を見つめる。
彼も憂いを込めた眼差しを返してくる。
「隣にいたいって、思ってくれる?」
こんな心配そうな顔、見たことない。
そんな弱々しい声、聞いたことない。
私は首がもげそうなほどにうなずいた。凍える喉を震わせる。
「いたいよ。ずっと一緒にいたい」
素直になれた。
わがままって思われないかな。なんて心配は、彼の顔を見たら吹き飛んだ。
すごくいい表情をしている。
これも、見たことない表情。
「よかった」
彼の安堵した声を聞いて、本当に、素直になれてよかったと思った。
彼がそう言ってくれるのなら、この3年間の苦しみも無駄じゃなかったのかな、なんて。
私たちは無言でお互いの姿を目に焼き付けて、そして、仲良く地べたに座り込んだ。
何も変わっていないはずだけど、お尻に伝わる冷たさも多少マシになった気がする。
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