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「わあ……」
「おお……」
指定されていた席を見て、私達は同時に声を出した。
「カップルシートってこんな感じなのか」
感心したような言葉に思わず頷く。
2人掛けのソファーは、足を伸ばせるようにオットマンが付いていて、シートが1人ずつ別々にリクライニング出来るようになっている。隣の席との間には顔が見えないように仕切りがきちんとあって、半個室みたいな空間だ。
「三浦さんはカップルシートで映画見たことあるの?」
「1回だけ。こんな仕切りとかは無かったから、単純に2人掛けソファーが並んでるだけだったけど」
「ふーん……」
「そっちはあるの?」
「俺は無いよ。彼女がいたのもいつだったかなって感じだし」
「……初めてのカップルシートなのに、本当に私で良かったの?」
「良くなかったら誘ってないって。そんなことより、座ろう」
促されて席に着くと、想像以上に距離が近い。
「これは……カップルならイチャイチャし放題だな」
「そう、だね……」
あまりの近距離に、心臓がドキドキしてうるさい。
「キスしたい……」
「えっ!?」
「仕切りもあるし薄暗いからさ。キスしたいって思う人多そうだなって」
「あ、ああ……そうかもね!」
ビックリした……そういうことか……
「何焦ってんの?」
「別に焦ってないから……!」
顔を見たら唇を意識してしまいそうで、可笑しそうに笑い続ける彼の方を向けない。
「もしかして……したくなった? キス」
「え……?何、冗談言って……」
ふいに止まった笑い声の代わりに聞こえてきた言葉。驚いて新海君を見ると、存外真剣な表情に出会って体も頭の中も静止する。
「……」
「新海君……?」
何も言ってくれない彼に動揺を隠せないまま、時間が止まった様に私達はしばらく見つめ合っていた。
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