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「お、いらっしゃい。また来たんだ」
「何よ。悪いの」
「そんなこと言って無いだろ。今日も珈琲でいいの?」
「うん」
「かしこまりました。席は……そこどうぞ」
示された席に座ると、自然とため息が1つ。
……また来ちゃった。あれ以来、気付いたら足がこの店に向いてしまう。学校帰りに寄ることもあるし休日にも来てしまうから、すでに常連並みに通ってる気がする。
あの男――新海晶は居たり居なかったりだけど、居ると必ず話しかけてくる。取るに足らない会話ばかりだけど、こんな風に男子と話した経験なんて無かったから新鮮。男友達ってこういう感じなのかな。
「はい、お待たせ」
「ありがと」
「よっぽどうちの珈琲気に入ってくれたんだな」
「え?」
「だってあれから何度も来てくれてるだろ。俺がシフト入ってない日も来てるって聞いたし」
そんな事を言われるぐらいには、他の店員さんにも顔を覚えられちゃってるんだ。
「そういや最初、俺の彼女だって勘違いされてたな」
「は? 勘弁してよ」
「そこまで嫌そうにしなくてもよくない? まあ、イケメン好きな三浦さんのお眼鏡には適わないんだろうけどさ」
「別にそういうわけじゃ……」
「新海君、こっちお願い」
「あ、はい。じゃあ、ごゆっくり」
店の奥に戻っていくのを見送りながら、何故か気持ちが沈んでいく。
イケメン好き……ね。別に、特別イケメンが好きなわけじゃない。ただ、そういう人の隣に立って認められたいだけ。
"君自身が見た目だけ"
この前言われた言葉が、ずっと頭の中に残ってる。
見た目を必死に変えて、やっと存在を認められるようになったと思ってた。周りの女の子よりも何倍も努力したはずなのに、何でか最後に選ばれるのは昔の私みたいな地味な女の子――。
私、何か間違えたのかな……?
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