3話

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「ん……」 目が覚めると部屋の中が真っ暗になっていた。だるさの残る体を起こして時計を見たら、もう夜になっている。 「何時間寝てたんだろ……まだちょっと熱っぽいなあ……」 体温計に手を伸ばして測ると、まだ37度台。元々だるかった体が、それを見て更に重くなる。 「ご飯どうしようかな……」 コンビニに行く気力は正直ない。デリバリーも考えたけど味が濃そうな物ばかりで、喉が痛くて風邪をひいた体には辛過ぎる。 それに……何度考えてもやっぱり頼れる人は居ない。寝たことで一度忘れていた心細さが蘇ってくる。 どんなに見た目を変えても、昔も今も結局私は1人ぼっち。家族以外には助けてくれる人もいない……そんな現実に涙が溢れそうになった時、スマホに着信が入った。画面に表示された名前は新海晶――ここ最近、数日に一度は見ていた顔が思い浮かんだ。 「……はい」 「すごい声だな。どうした?」 「……風邪ひいた」 「なるほど。それで店に来なかったのか。さてはあの日、雨に濡れて帰ったんだろ」 「うん……」 「だから傘貸すって言ったのに。熱は?」 「37.6度」 「まあまあしんどいな。食べるものとかあんの?」 「……ない」 電話の向こうで大きな溜め息が聞こえる。 「持ってきてくれる人は?」 「……いるわけない。実家遠いし、友達いないし……」 「じゃあ、俺が持って行ってやるから住所教えて」 「え?」 こんな時間から態々私のために……? 「別に差し入れ持っていくだけだから警戒しなくてもいいだろ」 「警戒してるとかじゃなくて……いいの?」 「何が?」 「こんな時間だし、バイトの後なんでしょ?」 「あのな……体調悪くて困ってる人間がいるのに、そんな理由で見捨てられるわけないだろ」 「そう、なんだ……」 「どうした?」 「……ううん、何でもない」 あんなに心細かったのに、安心と同時に嬉しく思っている自分がいる。 「何か食べたいものは?」 「喉が痛いから……」 「あー……じゃあ、プリンとかアイスとかがいいかもな。一応レトルトのお粥とかスポドリも持っていくから。住所送っといて」 「……うん」 電話を切ってメッセージで住所を送ると、20分ぐらいで行くという返事が返ってきた。 「私を助けようとしてくれる人もいるんだな……本当、どこまでもお人好し」 メッセージ画面を見ながら、気が付いたら自然と笑みが零れていた。
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