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「要さーん!」
自分を呼ぶ声と共に腰に衝撃がくる。
衝撃が来た方を見ると、1年の生徒会庶務の犬飼 春が巻きついていた。
春くんが顔を上げると自然と上目遣いになり、犬のようにも覚える。
少々力が籠っており1度離してもらおうかと音にしようとすると、ボクら以外の誰かの手により春くんとの距離が0から2になった。
「春!要先輩困ってるだろ。一旦離れろ。
すいません、要先輩。後できつく怒っときます」
「大丈夫だから、気にしなくていいよ」
その手の正体は生徒会書記の高橋 大輝だった。春くんは愛されキャラのようなみんなに好かれる性格をしている。巻き込まれ体質な部分もあるようで、幼なじみの大輝くんは自然とお世話係になっていったらしい。
本人は否定してるみたいだけど。
2人とは中等部の生徒会の時からの仲で、途中から転校でやってきたボクにとても懐いてくれて、懐きすぎ、とも言える春くんのスキンシップの多い行動から逃がしてくれたのはいつも大輝くんだった。その後こっぴどく怒られることもあるようで、大輝くんにはいつも
'あまり春くんをきつく叱らないでやってくれ'
という気持ちを含んだ返しを言っていた。
僕がこう考えている間に喧嘩を始めてしまった2人を視界の端にとらえたまま、入ってすぐに仕事を始めた生徒会会計の胡都 成音に近づく。
「おはよう、成音」
声をかけると目線を上げてこちらを向き「要、おはよう」と返してくれる。彼とはクラスが同じで話す機会が多い。ちなみに千栞も同じSクラスだ。
明後日にある学力テストの話やもうすぐ提出の書類の話などという軽い世間話で盛り上がっていると、「ねぇ」と隣の机で仕事に集中していた千栞がパソコンを閉じて話しかけてきた。
「みんな呼んだのに話さなくていーの?」
「あ、忘れてた」
千栞に指摘されみんなを呼んだ要件を思い出す。頭の片隅にはあったがすっかり忘れていた。
ただ忘れようとしていただけなのかもしれないけど。
「みんな集合」
大きな声でそう言うと春くんたちの喧嘩はピタッと収まり、みんなの視線がボクに集まる。
「みんなにお知らせがあります」
その一言を聞いたみんなはなんだろうとこちらを見る目を強くする。
すうっと空気を吸い理事長から伝えられたことを音にする。
「この学園に転校生が来ます」
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