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そっと心の中で願った思いが叶うことはなく、
校内には四限が終わるチャイムが鳴り響いている。
僕の感情が出てしまっているのか、生徒会室から2-Sに向かう足取りは重くなっている。
かといって教室に着かないわけではなく、片目だけモノクロな僕はドアの前で固まっていた。
生徒会長を務めていて、所属しているクラスでもあるここの前で突っ立っていると悪目立ちをしてしまうのは分かっているので、ガラッと音を立てて教室のドアを開けた。
教室の全員の視線がボクに集まっているのを感じる。ボクは震える手の存在を無視して何度も心の中で練習した言葉を紡ぐ。
「観塚真ひ「要?」」
ボクが言おうと思っていた言葉は途中で遮られ、
懐かしくも感じてしまう声が耳に届いた。
同時に教室がざわついたのを感じる。無理もない。生徒会メンバーと親衛隊ぐらいにしか名前で呼ばせないボクの名前を、初対面のはずの彼に呼ばれていたのだから。
周りの反応は置いといて、僕は少々早口になりながらもボクの笑顔で彼に言葉を返す。
「久しぶりだね。この学園では生徒会長をしているよ。きみに校舎案内をしに来た」
「ああ、わかった」
きみ、と呼んだことに戸惑ったのか、それとも今のボクに気づいたのか、なんなのかは分からないけれど彼は少し引きつった笑顔でそう返した。
荷物を置いてこちらに来た彼と共にボクは廊下を歩き出した。
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