第一章

13/32
前へ
/34ページ
次へ
「久しぶりだね、要。道案内お願いします」 千栞の言い方で言えば爽やかくんスマイルで彼はこういった。 「久しぶり。道案内、任されました」 昔2人で過ごしていた時の軽いノリで言葉を交わす。数ヶ月ぶりに少しだけ心が暖かくなった気がした。 昔の事を語り出すときっとあの時を思い出して、上手く話せなくなる。今のボクのこともバレたくないし。 そんな思いから僕はボクとして道案内を始めた。 「ここが食堂。安いものから高級フレンチまで、たくさんあるよ」 「へ〜、広いね。今度一緒に食べに来ようよ」 「いいよ。けど、生徒会の仕事で少ししかいられないかも」 この学園は普通の学校よりも明らかに広く豪華だ。多くの財閥の息子が通い、その保護者が寄付金を出していることが大きな理由である。 ボクも前は家の方針で普通の中学校に通っていたため、驚いた記憶がある。 こんなにも家に似た豪華さがあるものかと。 「ここは図書室。図書室って言うけど、本屋さんとかと中にある本は変わらないよ。漫画とかあるしね。借りられる本は1人3冊まで。借り方がわからなかったらカウンターにいる図書委員さんに聞けばいいよ」 「少し中を見て言ってももいい?」 「構わないよ」 ここの図書室は先程も言ったように本屋さんと同じぐらいの種類の本がある。漫画とか買う必要がなくなるから結構利用する人は多い。 なんてことを図書室に入り本棚を見ながらくるくると歩き回っている真優について行きながら考える。 彼は昔から本が好きで、よく僕と一緒に読んでいた。千栞は彼を爽やかくんと言うけれど、そういう一面を見るとどこまでが千栞のいう爽やかに入るのだろうか。 他から見たらしょうもないとも言えることを考えていて外れた視線を元に戻す。 もう満足したのか真優はこちらへきて「次のところ案内してよ」と言った。 もちろんと頷き、次の所へ向かう。本当に昼休みで足りるだろうか。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

238人が本棚に入れています
本棚に追加