第一章

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職員室につき、ドアをノックし中にはいる。 「2年の宮川です。西田先生はいらっしゃいますか?」 周りを見渡しながらそう言うと西田先生が来るのが見えた。 西田先生は生徒会の顧問でボクのいる2年S組の担任でもある。雰囲気はおっとりしていて平均より少し低い背のいわゆるかわいい系の先生だ。 「宮川くん朝早くから呼び出してごめんね。要件は知ってる?」 「はい。理事長のところに行くんですよね」 申し訳なさそうにしながら西田先生が聞いてきたので稔世先輩に教えてもらったことを伝える。それを聞いてほっとしたのか、よかったぁ。といい、2人で職員室を出る。 詳しいことは聞いてないので、どうすれば…と周りをキョロキョロしていると、それに気づいた西田先生がああ、と話し出した。 「詳しいことは行きながら話すね」 その言葉に頷き、先を歩き始めた西田先生の少し後ろを歩きながら話を聞く。 何をするんだろうか。 「要件の内容だけど、どうやら理事長が君に会いたいとの事だ」 西田先生から告げられたことについて考える。 理事長はあまり役職持ちというか生徒と話さない人だと聞いた。その通りならば他になにか話すことがあるか…と考えるとひとつ思いつくものがある。 家の事だ。 宮川財閥は理事長が当主として動いている神宮財閥と縁が深い。ボクが今年正式に次期当主と発表されるからきっとその話だろう。 しかし、何故わざわざ学校で呼び出したのだろう。 そのことを不思議に思いながら歩いていると理事長室の前に着いた。 「理事長、失礼します」 次期当主としての話だとしたら笑みは大事。 一段と大きな笑みを被って行こうじゃないか。 僕は誰にも気づかれないように口角を片方だけ小さくあげ、西田先生に続いて理事長室へと入っていった。
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