短編ストーリー。

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短編ストーリー。

毎年のクリスマスはどこも賑やかだ。そして今年も、クリスマスがやってくる。なのにクリスマスは、時に残酷だ。幸せと思う人の傍らには、クリスマスは不幸せな人も中にはいる。憂鬱で嫌なイベントだ……。 昔は子供の頃、サンタがいるの信じていた。そして、クリスマスにはご馳走があって暖かい家族の温もりと楽しそうな笑い声が家の外に響く。  そんなごくあり触れた光景が懐かしい。今では一人きりの寂しいクリスマス。あんなに楽しかったクリスマスが今では遠い昔話のような出来事だ。サンタさんに貰ったプレゼントなんか今じゃ覚えていない。今年もクリスマスがやってきた。一人きりの俺には憂鬱なイベントだ。 ――その日のクリスマス、街はいつもよりも賑やかだった。そんな時、自分が歩いている方に、サンタの格好をした男がぶつかってきた。一瞬いらっとなって舌打ちした。だが、今日はクリスマスだ。こんな日にイラつくのも余計に損した気になった。男は軽く会釈して謝ると大きな白袋を肩に抱えたまま、人混みの中へと消えた。  きっとサンタの格好をしたバイトのヤツだろう。この時期になるとよく見かける。俺は特に、することもなく、クリスマスの雰囲気だけを味わおうと、一人きりでクリスマスのムードに彩られた街中を徘徊した。暫く街中を徘徊していると、空から雪が降ってきた。ちょっと息も白く見える程度になると、体を震わせながら自分の家に帰ろうと急ぎ足になって歩いた。  自分へのクリスマスプレゼントなんて、買う柄でもないので、買わずに路上で売られているケーキだけを買った。そして、手にはケーキの箱が入ったビニール袋を下げて黙々と歩いた。  ようやく家の近くまで辿り着くと、信号の前で立ち止まった。するとどこからか歌声が聴こえてきた。周りをよくみると、路上の片隅でギターを持って歌っている青年が目にとまった。  彼はそこに誰も人はいないのにギターを弾きながら歌い続けた。雪も降ってきて寒いのに、彼は歌う事を止めずに歌い続けた。そして、一曲目が終わるとまた別の歌を歌い始めた。  何を彼をあそこまで夢中にさせるのか、私には全然わからなかった。だが、1つだけ言えるのは彼の歌声が素晴らしいことだった。足を止めると、彼の歌を聴こうと近くまで寄ってしまった。彼はギターを弾くのを止めると不意に私に声をかけてきた。 「こんばんは、メリークリスマス!」  垢抜けた挨拶に思わず自分も知らない相手に挨拶を返してしまった。青年は目鼻立ちがスッキリしていて見た目もかっこ良かった。  私は一瞬、彼の顔をジッと見つめるとハッとなって目を反らした。彼は私に挨拶をし終わったあとも何故かニコニコ笑っていた。 「今日はクリスマスなのに寒いですね、よい一日を」  彼は再び私に話かけてくると、ギターを軽く指先で鳴らした。私はそこで彼に話かけた。
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