守護神の選択

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新入社員の社内プレゼンの前夜。もう吐きそうなほど細かい資料作り。あっちを直せと言われてそうしたら、こっちと辻褄が合わない。こっちをいじったらそっちもどっちもグッチャグチャ。 ダメだ、ボクには不向き。 いいや、守護神くんに任せちゃおう。頼むよ、お願い。 どこにいるかわからないけど必ず近くにいるはずの彼。見つけて反応を見る前に、ボクは出かけた。 やなことは忘れて、飲めや騒げやで大宴会。でも資料も段取りも大丈夫なはず。彼はいつだってちゃんとこなす。出来はイマイチだけどな。 が、ボクが酔いつぶれた翌朝のプレゼン当日。資料はできていなかった。会社のデスクには昨日ボクが広げたファイルとパソコン上に作りかけのままのパワポの資料。 え~~~~っ? 資料もないままぶっつけ本番のボクは当然大失敗、上司から大目玉、大恥をかいた。 ボクはフロアを飛び出し、非常階段から空に怒鳴った。バカ野郎、何してくれてんの。てか何で何にもしないんだよ、おい!  守護神くんは背後に現れ、ボクが振り返ると同時にヌッと紙を突き出してきた。 「何、これ」 「これまでの請求書だ」 「え?」 「君のやるべきことを代行してやった。当然そこには報酬が生じる」 何だと~~~? この守護神くんは今まであまりしゃべらなかった。こんなインテリみたいな言葉遣いをするのか。そういえば、いつもポケットに本が入っている。ボクと違って読書家なのか。いや、そんなことより。 その請求書を見て目が転げ落ちるかと思った。 「高っかー! てか金取るってどういうこと?」 「まさかタダで何でも都合よく行くと思ってないよな。ピンチを救われたっていう自覚はないのか?」 いやそうは言っても。守護神とは、神と名はつけど、ボクあっての意義あるお役目、ボクを守るために存在するはずじゃないか。 「人助けに金が絡むのはおかしいでしょ。心の情が行動にあらわれたものなわけだから、報酬とか勘定とかえげつない――」 「じゃ僕はもう辞めるよ」 「え、何その強気。ちょっと。善行でしょ。守り神でしょ。広い心の深い情ってものが」 「代行してやってんだ、報酬を払うのか払わないのかどっちだ? 何ならもっと高額にしようか」 これは――先物詐欺? ボクの将来を人質に取った、一種の悪徳商法?
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