守護神の選択

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そしてボクは、理解した。 浮遊している今のボクは、どこにでも行けるし、どっからでもいろんな人達を見渡せる。 ある日、目に付いたドジっ子に、つい助けを出した。どこかに大切なメモを落としてしまったという少年。探しても探しても見つからなくて、ベソをかいていた。 ボクは浮遊できるといっても、何の能力が備わったわけでもない。でも、そのドジっ子がどこを通って誰と話して何をした。そんな聞き取りをすれば、おのずと想像力が働く。推理を積み重ねてみたら、めでたくその大切なメモは見つかった。 ただの、気まぐれ。やることがないから、何をしていいかわからないから、ただ流されるままできることをしてみただけ。でも。 「ありがとう! 本当にありがとう! 君は守護神なの? 一生尊敬するよ」 目をキラキラさせて素直な感謝を溢れさせるこのドジっ子を見て、ああこれがあの時のボクだったんだと。そして今胸に湧き上がるこの気持ち――清々しくて嬉しくて他にも出来る限り力になってやりたい……それが、あの時のあいつの思いだったんだと。 理解した。
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