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行き先をふさがれた僕は、家を振り返った。縁側から、母ちゃんの寝ている部屋が見える。
「母ちゃんな、『迷いの花』っていうのを見たことがあるんだよ」
母ちゃんがそう言ったことがあるのを思い出した。
迷いの花。見つけた時の色が、赤なら進め、白なら戻れ、なんだって。
「だから母ちゃんはここにいるんだよ」
母ちゃんはニッコリ笑ってそう言った。そのせいで、東京の父ちゃんを追っていかなかったのか……?
大人たちに押し戻されて家に戻った僕は、母ちゃんの青白い寝顔を見て思った。
明日。明日、僕もその花を探しに行こう。
父ちゃんに会いに行って今の生活を壊すのか。それとも行かずに母ちゃんの寂しさを見て見ないふりをし続けるのか。
迷いの花。行くか戻るか教えてくれる花。
教えてくれ。僕は、どうしたらいい?
明日の朝早起きして、必ず見つけてやる。
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