ガムシロ

コーヒーにガムシロを入れるか粉砂糖を入れるかというただそれだけのくだらない内容で喧嘩した…喧嘩というのだろうかあれは。

所謂ただの言い合いっこだ。ガムシロも粉砂糖も大して変わりないじゃないかと思うが意外とこだわりってもんがあるのだ、人には。
全くもって失礼だ。ガムシロのどこがいけないというのだ。砂糖より断然溶けやすいし、アイスコーヒーなら透けたグラス越しにみえるあの溶ける様子、何となくいいじゃないか。何となくだけど。そもそもアイスコーヒーに粉砂糖を入れるな。
それでも藤田は砂糖の方がいい、傾けた時のサーッと出ていく様子や音が心地いい、とか。
ガムシロだってペキッてあける時、何か快感じゃないか。負けるな、ガムシロ。俺はお前を応援する。

それが昨日の話、今俺は喫茶店にいる。
一応他人の意見を聞いてみるのも、人生においての大事な成長だし、うんと頷き、俺は頼んだコーヒーに入れるべく改めて粉砂糖を取りにいこうと席を立った。

そこで俺が見たのは、空のガムシロ容器片手にコーヒーをにらんでる藤田だった。