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 懇親会の案内だ。  このモールでは半年に1回、テナントに関係なく、ホテルなどの大規模会場を貸し切って美味しい料理にありつける機会がある。これがその会だ。去年は新型肺炎の影響で無くなっていたが、今回は感染対策を十分講じた上で開催されるらしい。景品付きのビンゴゲームやくじ引きなどのイベントが行われ、運が良ければ最新式の家電が手に入る。モールの経営陣が他店のスタッフとの交流の場をうたっている、私が入社した頃からこれは懇親会という名の出会いの場ともされていた。  開催日は今から2週間後。 「……さよちゃん、これにそのイケメンくんを誘ってみたら」 「え?」  まつ毛をパチパチさせ、さよちゃんはポスターを見上げた。 「これに参加しませんかって誘えばいいよ」 「え、え、そんなあからさまなことできませんよっ」  手をぶんぶん振って否定する。 「このポスターを見せて『参加しますか? みんなに聞いてます』とかなんとか言って誘っちゃえば?」 「無理ですっ、直接なんて、私にはハードルが高すぎます」 「えー、簡単だよ。初めての電話で私の名前はマルマルですって言っちゃうぐらい、天然なさよちゃんなら、難なくできるよ」 「……それを言わないでくださいよぉ……、(ちょく)は無理ですって……せめて、連絡先を知ってたら、断られてもまだダメージが少ないっていうか……」  最近の子はスマホでのコミュニケーションは得意だけれど、その反面、直接誘うのは難しいのだろうか。表情が見えない分、スマホでのやり取りは、深読みをしてしまい、意味を取り違えてしまう可能性が高いのに。直接、顔を見て話す方が、アリか、ナシかを判断しやすい。今どきの感覚は謎だ。 「……そよかさんなら自然に誘えそうです……」 「いや、なんで私?」  うわ、変なアドバイスしなきゃよかった、と思ったときには彼女は手を合わせ、懇願するように私を見ていた。 「そうだ、そよかさんが誘ってください。お願いしますっ」 「いやいや、こんなオバサンに言われても、嫌でしょ」 「嫌じゃないですって、一緒に来てください、ひとりでは無理です。お願いしますっ」  この素直さが憎めない、とつい笑ってしまった。 「えー、もう、……仕方ないなぁ」
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