side伊織

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 僕の両親は恋愛結婚だった。アルファの父とベータの母。もちろん、お互いに愛し合っていたと思う。僕もオメガに生まれたにも関わらず、愛情を注がれて育ててもらったことは覚えている。だがある日、めったに鳴らない固定電話が鳴り、その電話に出た母は、電話を切らないままその場で泣き崩れた。相手は父からだった。後から聞くと、アルファの父とその運命の番であるオメガと出会ってしまい、その運命に逆らうことができず、ベータの母より運命を選んで僕らを置いて出て行ってしまったのだ。  僕はその時ショックというより、よくわからなかった。なぜ、あんなにも愛し合っていた両親が、その運命の番によって狂わされなければならないのか。たかが運命だからって、そんな簡単に長い時間を過ごした相手を捨ててしまうほどの強烈なものなのか。  その出来事から僕は自分がオメガに生まれたことを悔やみ、もしかしたらいるかもしれない僕の運命の番には絶対会わないと決めた。たとえ、それほど強烈なものだとしても、僕は抗ってやると……。
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